2016年1月、北京で開催されたアジアインフラ投資銀行(AIIB)の開業式典で登壇した習近平国家主席(写真:新華社/アフロ)

 去る7月12日、13日、ルクセンブルグでアジアインフラ投資銀行(AIIB)の第4次年次総会が開かれた。参加者数は3000人に及び、72の加盟国政府関係者の参加はもちろん、民間のファンド・マネジャーの参加も多く、大きな脚光を浴びた(日経新聞7月23日記事)。

規模ではまだADBに及ばないAIIB

 AIIBは、新開発銀行(通称BRICS銀行)とともに、2015年に設立されたが、それは世銀、アジア開発銀行(ADB)等を中心とした米国主導型の開発金融のあり方に疑問を呈し、そこに風穴を開けるべく採られた試みであった。設立当初は、中国主導の企画であったことから、その参加に慎重な先進国が強かったが、英国の参加表明をきっかけに、先進国、途上国を問わず、こぞって加盟し、現段階においては、ADBをはるかに上回る国がメンバー国となった。

 その後、融資事業の方も順調に伸び、この7月段階で、総額84億ドルに達した。このように、AIIBは、この3年半の短い期間に国際的信認を獲得するとともに、その融資事業を軌道に乗せることができたが、それは果たして、長年日本を中心に運営されてきたADBの牙城を覆すものとなりうるであろうか、ここでは、この問題に焦点を当てて、議論していきたい。

AIIB加盟100か国に、日米未加盟でも影響力は増大

AIIBの金立群総裁(2016年1月17日撮影、資料写真)。(c)CNS/張浩〔AFPBB News

 確かにAIIBは、融資額は累積ベースで84億ドルに達するが、これを年額ベースに換算すると20~30億ドルにすぎず、ADBの2018年度融資額216億ドルと比較するとはるかに少ない。しかも、AIIBの融資の半分以上は(融資件数でみて56%は)、ADB、世銀等の他の国際援助機関が開発したプロジェクトへの相乗であり、独自に開発したプロジェクトは少ない。運用上も、当該プロジェクトを開発したADB、世銀等に対し、その開発に対してフィーを払っているような状況にあり、開発機関というよりは、むしろ資金提供機関に近い。