食べものにより、おいしいと感じるコクの強さがある

「コクはおいしさを決める重要な要素ですが、コクがあればあるほどおいしいわけではありません。強ければくどい、しつこいと感じるし、弱ければあっさりしている、さっぱりしていると感じます。食べものの種類によって適切な、おいしいと感じるコクの強さがあるのです」と、西村さんは話す。

 たとえば、和食ではコクが弱いほうがおいしい。ベースとなる食材の特徴そのものを味わうことでおいしいと感じるからだ。一方、シチューやカレーなどの煮込み料理やこってりラーメンなどでは、コクが強いとおいしく感じられる。

やはり「タマネギを炒める」はコクに貢献していた

タマネギから、コクを出すことにつながる要素が見出されている。

「これまでの研究で、コクを増強させる成分が見つかっています」と西村さんは続ける。見つかった物質自体には味がないが、スープに加えると風味の広がりや持続性が増し、コクが強められる。同じように、風味にコクを付与したり、強めたりする香気成分も見つかっている。

 さらに、風味の持続性には油脂が重要な役割を示す。油脂にも味はないが、呈味成分や香気成分には油脂に溶けるものが多くあり、油脂の中に味や香りが閉じ込められて風味が持続するのだという。

 たとえば、ニンニクやタマネギには風味を増強させる物質があること、セロリの香気成分が風味の広がりや持続性をもたらすこと、また、タマネギを加熱してできた濃縮物中にも香りを保持する効果があることが見つかった。

 料理をするとき、セロリやタマネギなどの香味野菜を炒めるのはコクを出すためと感覚的には分かっていたが、科学的にも裏付けられたのである。