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(佐藤 けんいち:著述家・経営コンサルタント、ケン・マネジメント代表)
香港のデモが続いている。香港政府が主導した「逃亡犯条例改正案」を廃案に持ち込むため、香港の一般ピープルが立ち上がった。今年(2019年)6月16日には、200万人を超える香港史上最大級のデモが行われた。香港の全人口の4人に1人がこのデモに参加したという。だが、いまだ所期の目的を達成できていないとして、デモは現在も終息することなく継続している。
香港人たちの悲壮感と覚悟
1997年の英国からの返還後は「一国二制度」の下にある香港だが、逃亡犯条例改正が実現してしまうと、香港政府を実質的に牛耳っている中国共産党の意のままになってしまう。中国にとって都合の悪い容疑者が、恣意的に中国に引き渡されてしまう可能性が高まってしまうからだ。これは外国人であっても例外ではない。
カネをもっている人間は、すでに海外に移住するなど拠点を確保している。だが、そうでない人間は香港に残らざるを得ない。香港で生まれ育ち、香港で生きていく「香港新世代」にとって、アイデンティティの源泉は中国ではなく香港にある。自分たちの運命に直接的に関わってくるからこそ、運動に立ち上がったのであり、香港で自由に意見表明ができる最後のチャンスだという悲壮感と覚悟が、香港人たちをデモにかき立てているのである。