アイスランドからやってきたサスペンス映画『隣の影』を見て、あまりの身近さになんとも言えない気持ちになった。どこにでもあるご近所トラブル。最初は笑って観ていたものの、とんでもない顛末に浮かんだ笑顔が引きつってしまう。
日本でもヒットした『幸せなひとりぼっち』という映画がある。妻に先立たれ、孤立した老人が新しい隣人を受け入れることで、夢と希望を見出していく心温まる内容のドラマだが、監督のハンネス・ホルムに取材した際、「スウェーデンも日本と同じように謙虚さを大事にする国なので、孤立した老人が増えています。知らない人に対して、壁を立てやすいんです」と話していたことを思い出す。
「NO」と言わない日本人などと言われ、世界的には意見しない国の代表のように思われている私たちだが、外国人みんながみんな、言いたいことを言うわけではない。『幸せなひとりぼっち』で感じた予感を『隣の影』で確信した。主張を胸にしまって、最後は我慢しきれず大爆発するのは日本人だけじゃない。遠い国のように感じていた北欧の人々にシンパシーを抱かずにはいられない。
凄惨な「ご近所トラブル」
マンション暮らしのアトリとアグネス夫婦はどこかの部屋から毎日のように聞こえてくる激しい喘ぎ声に悩まされていた。眠れず、昔の彼女の動画を見ていたアトリはその姿を妻に咎められ、浮気と勘違いされて三下り半。家から追い出されてしまう。