勝ち方、点の取り方を知っているチームとは
井端氏はドラゴンズ時代、圧倒的な「勝利」を経験している。一軍に定着して以降(2000~13シーズン)、Bクラスは2回(01、13年)のみ。一方で優勝4回、2位6回、3位2回、そして日本一1回に貢献してきた。
象徴的だったのが落合博満監督時代の不気味なほどの強さだ。
打撃3部門でタイトルを獲るような突出した数字を残す選手がいなくとも(00~13年で打撃タイトルを獲ったのは02、06年の福留孝介の首位打者、07年ウッズ、09年ブランコの本塁打王のみ)、井端氏を中心とした守備力、投手力そして効果的な得点で、勝利をもぎ取る――「勝ち方」を知ったチームであった。
「個々の選手が打っているから強い、と一概に言えないのがチームであり、ペナントレースですね。凡打でも得点につなげられる、要所で得点を取る、そういう部分を押さえられているチームは勝ち方を知っていると言えます。当時のドラゴンズもプレーをしていて、そういう部分で他のチームより勝っている感覚がありました。それがないと、ヒットを打っている割に点が入らない、本塁打が出ているのに勝っていない、という現象になっていきます」
例えば今シーズン、首位ジャイアンツと、2位ベイスターズ(7月19日現在)は、ともにチーム本塁打が100本を超える強力打線を誇るが、その差はゲーム差にして10、ジャイアンツは貯金18、ベイスターズは借金生活(2)である。
「ベイスターズの場合はもともと本塁打で点を取るチーム。得点パターンは連打で繋いでいくというよりも、本塁打が出たときにランナーがいれば良し、という傾向があります。本塁打、打率といった数字上の見栄えが良くても、それが必ずしも勝利につながらないのは、打線が打線といわれるゆえんの『線』になっていないからでしょう」
井端氏が2004年にセ・リーグを制した際のドラゴンズは、チーム打率、得点数が5位、本塁打数は最下位だった。それでも、ここぞというときに細かく繋ぎ、ダメ押しの本塁打で相手を突き放す「打線」だった。
「本塁打が効果的な『打線』となっているのは、とどめの得点が本塁打という場合ですね。相手からすれば、連打で得点を奪われて、仕上げに本塁打。これは堪えます。でも、単発で打たれているときというのは、そこまでダメージがないんです」