(佐藤 けんいち:著述家・経営コンサルタント、ケン・マネジメント代表)
「100年前」については、比較的よく話題になる。いまから100年前の1919年は、第1次世界大戦が終結した翌年にあたる。「人生100年時代」というフレーズにもあるように、「100年」という単位は、感覚的に把握可能かもしれない。
ところが、150年となると、あまり意識されることはない。1968年(昭和43年)には政府主導で「明治100年」を大々的に祝った。しかし昨年2018年は明治維新から150年にあたる年であったが、保守政権であるにもかかわらず「明治150年」を大々的に祝うことはなかった。明治維新史観の見直しなど、50年前とは異なる状況が顕在化してきたためでもあるが、それだけではないような気もする。
さらに言えば、「200年前」が話題になることはほぼないと言ってよい。私が中学生の頃、「アメリカ建国200年祭」というものがあった。カーター大統領時代の1976年7月4日のことである。「200年祭」は英語では "bicentennial" ということを、その当時視聴していたNHKラジオの「続基礎英語」で知ったが、それ以後、この英単語に出会ったことはない。英語圏でもめったに使われないようだ。
今回は、いまから200年前に日本で達成された“知られざる偉業”について、あえて取り上げたいと思う。それは「群書類従」(ぐんしょるいじゅう)の完成である。知る人はあまり多くないかもしれないが、「群書類従」と、そのプロジェクトを推進した人物については、この機会にぜひ知ってほしいと思う。
「群書類従」のすごさとは
「群書類従」とは、古代から江戸時代初期までに成立した国文学と国書に関する書籍を集成し、書籍として刊行した一大ライブラリーである。1273種類、全666巻(+目録が1巻)からなる。1778年に編纂作業が始まり、200年前の1819年(文政2年)に完成した。なんと41年かかって完成した民間主導の半官半民プロジェクトであった。