コレステロールはなぜ「悪者」扱いされてきたのか

「卵は1日1個まで」はもはや昔の話

2019.07.05(Fri)佐藤 成美

「卵は1日1個まで」は過去の話

 こうして「過剰なLDLコレステロールは悪玉」という図式ができた。しかし、コレステロールを含む食ベものの摂取がこの図式と直結しているかというと、そうではないようだ。

「コレステロールの含まれる食べものを食べると血液中のLDLコレステロールの値が高くなる、というのは間違いです。最初は動脈硬化の患者さんに卵やバターなどコレステロールを含む食品には気をつけなさいといった程度のことしか話していなかった。それなのに、伝言ゲームのように話がどんどん広がり、いつのまにか食べたらいけないと変わってしまったんです」と近藤さんは続ける。

 コレステロールの代謝に異常をきたすと、高コレステロール血症になる。しかし、コレステロールは生体でほとんど合成されるものであり、食事から摂ったコレステロールが直接コレステロールの代謝に関与するのは2割くらい。食事からのコレステロールの摂取量が多くなっても、生体内でコレステロール合成のバランスを取るので、食事からのコレステロールはほとんど影響ないのだという。

 コレステロールの代謝異常には、摂取エネルギーの過剰や運動不足、飲酒などの生活習慣のほうが影響する。さらに、LDLの変性や炎症には、喫煙や高血圧、糖尿病の影響が大きい。

「患者さんには、動脈硬化を予防するためにはまずは食事全体のエネルギーを減らしなさい、と話します。卵は栄養分が豊富で、抗酸化成分が含まれることも知られていますから、食べたほうがいいです。私の臨床医のころの経験では、夜勤明けに卵を食べるか食べないかでその日の調子が変わり、卵を食べると調子がよかったのです。卵は昔から多くの人を飢餓から救った貴重な食品ですからね。だから、栄養が不足しがちな高齢者などは、むしろ卵を食べるほうがいいと思います」と近藤さんは話す。

「それでも気になる方は、脂肪酸の種類に少し気をつけたほうがいいかもしれません」と近藤さんは補足する。動物性の食品に多く含まれる飽和脂肪酸や、マーガリンやショートニングに含まれるトランス脂肪酸が、LDLコレステロールを上昇させることが知られている。また、イワシやサバなどの青魚に多く含まれるn-3系不飽和脂肪酸が動脈硬化を防ぐことは古くから知られているし、近年の研究からは食物繊維や植物ステロールの血中コレステロールを低下させる作用も期待されている。

「卵は1日1個まで」といわれたのは過去の話だ。動脈硬化を予防するなら特定の食品を控えるのではなく、食事全体を見直そう。当たり前のようだが、結局いろんなものをバランスよく食べ、喫煙をやめ、適度に運動をする。健康はこれに尽きるようだ。

いかがでしたか?
JBpress をブックマークしましょう!
Twitterで @JBpress をフォローしましょう!
Facebookページ に「いいね」お願いします!

この連載記事のバックナンバー
トップページへ戻る