コレステロールはなぜ「悪者」扱いされてきたのか

「卵は1日1個まで」はもはや昔の話

2019.07.05(Fri)佐藤 成美

 血液中のコレステロールは、よく「悪玉」と「善玉」に分けて認識される。LDLとコレステロールの複合体であるLDLコレステロールは悪玉で、HDLコレステロールは善玉とよばれる。LDLコレステロールは動脈硬化やそれによる虚血性心疾患と関わりがあることが知られ、この値が高いと動脈硬化が進むと説明される。

「コレステロールが動脈硬化と関わりがあると言われるようになったのは、100年以上も前のことです」と、脂質の代謝を研究する東洋大学教授の近藤和雄さんは話す。1910年には、ドイツのアドルフ・ウィンダウスがヒトの大動脈プラークには健常者の25倍以上のコレステロールを含むと報告した。プラークとは、動脈硬化が進むと血管壁に形成される異常組織のことだ。その後、1913年にロシアのニコライ・アニチコフが、ウサギにコレステロールを含む餌を食べさせると、ウサギが動脈硬化になったと報告した。

「ただし、そのころは血液中のリポタンパク質の分析は難しく、その実態は分かっていませんでしたから、動脈硬化の原因はコレステロールとはいえませんでした。コレステロールが身近になり、善玉とか悪玉といった言葉がよく知られるようになったのは1970年代ぐらいのことかと思います。コレステロールの分析ができるようになってからでしょうか」(近藤さん)

動脈硬化症と合併して生じることのある冠動脈の狭窄(矢印の先の部分)。心筋梗塞をもたらすことも。

 1950年代にアメリカのジョン・ゴフマンが、超遠心分離という方法で血漿中のリポタンパク質をLDLとHDLに分けることに成功した。これがきっかけで、1970年代にはアメリカのリチャード・ハーベルらにより沈殿法による簡便なコレステロールの分析法が開発され、健康診断に血中コレステロール値が取り入れられることになった。また、1970年に7カ国で行われた疫学調査の結果が報告され、過剰な血中コレステロールと動脈硬化の関係が決定づけられた。

 1980年代になると、血管壁にとりこまれるLDLは酸化していることなどが示され、アメリカのダニエル・スタインバーグが仮説としてまとめた。酸化変性したLDLコレステロールが動脈の壁に取りこまれて炎症を起こし、動脈硬化を引き起こすというものだ。この仮説に注目が集まり、多くの研究によってその仮説が裏付けられている。

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