(写真はイメージ)

 山本一郎さんとのつきあいはもう20年近くになる。「2ちゃんねる」といういささかやんちゃな世界からぽっと飛び出してきた元「切込隊長」はやがてアルファブロガーとして名を馳せ、数々の著作を発表し、そのうちにテレビのレギュラーコメンテーターとして呼ばれるまでになっていた。

 山本一郎さんといえば、その毒っ気の強い文章が魅力の書き手だ。山本さんがターゲットにした相手への、軽妙なウィットに包み込んだ、それでいて的確すぎて痛烈な批判。それは第三者的に読む立場にもぐさりと刺さってくる。こんな批判の矛先が自分自身に向いたらなどと想像するだけで背筋が寒くなる。

「けなす」ことにかけては当代一流。過去に『けなす技術』(ソフトバンククリエイティブ)という著作まで出版している。じっさい誰かを美しく「けなす」ことについてこの人の右に出る人を知らない。

 しかし、その「けなし」は世の中の陰湿なイジメとは一線を画していると個人的には捉えている。彼のけなしてきた相手は、こう言っては何だけれど、けなされても仕方のない人ばかりだったように思う。あいつをけなしたいけれど感情的に罵倒する以外ろくな言葉も思いつかない我々読者は、文学的な価値すらにじむ上品な語彙で綴られた山本さんの一流の「けなし」にずいぶんと溜飲を下げたものだ。

「文春オンライン」の連載記事が様変わり

 ただ、今回の本『ズレずに生き抜く 仕事も結婚も人生も、パフォーマンスを上げる自己改革』(文藝春秋)はネットで展開されるそうした痛快な「けなし」とは一線を画している。