5月9日に発射された北朝鮮版イスカンデル(出所:労働新聞ウェブサイト)

(黒井 文太郎:軍事ジャーナリスト)

 5月9日、北朝鮮が2発の短距離弾道ミサイルを発射。翌10日早朝、国営メディアである朝鮮中央通信と労働新聞が、さっそくその様子を伝えた。

 それらによると、この日の発射は「西部前線防御部隊」の「火力打撃訓練」で、「複数の長距離打撃手段」が試されたという。訓練の目的は「西部前線防御部隊の迅速反応能力を判定、検閲するため」とされた。つまり、実戦的な即応訓練である。

 視察した金正恩委員長は、「国の真の平和と安全は、自己の自主権を守れる強力な物理的力によってのみ保証される」と訓示し、「現情勢の要求と党の戦略的意図に合わせて最前線と西部前線防御部隊の戦闘任務遂行能力をさらに向上し、いかなる不意の事態にも主動的に対処できるように万端の戦闘動員態勢を整えていなければならない」と指示したという。つまり、北朝鮮の説明では、この発射は純粋に国の防衛に必要な戦力強化のための訓練ということだ。

2種類の新型兵器が登場

 両メディアは、この訓練の写真も発表した。そこに写っていた兵器は、3種類。「240ミリ多連装ロケット砲」「自走榴弾砲」「短距離弾道ミサイル」である。

 このうち240ミリ多連装ロケット砲は、1990年代から運用されている従来型の兵器だ。長年にわたって運用されてきたものであり、兵器としての信頼性は十分なため、これについては、従来の部隊の実働訓練ということだろう。

 注目すべきは、他の2種類がいずれも新型兵器だということだ。

 新型の自走榴弾砲は、従来の北朝鮮軍の自走砲より大型の152ミリの榴弾砲を搭載した自走砲で、2018年9月の軍事パレードで初めて登場したものだ。当時と比べると、若干の仕様変更はある。