「大勝利」から一転、「債務の罠」に転落――。
米メディアの一部は、マレーシアのマハティール首相が、2件の一帯一路関連プロジェクトを継続決定したことで、同首相に対する評価をわずか1週間の間に一変させた。
また日本のメディアも、昨年8月、マハティール首相が中国訪問時に習近平国家主席や李克強首相との会談の際に「新植民地主義は望まない」と世界のメディアを前に非難したにもかかわらず、ここにきて中国との融和を図る姿勢に戸惑いを隠さない。
2つの一帯一路関連プロジェクトとは、1つは、南シナ海とマラッカ海峡を結ぶ一帯一路の生命線「東海岸鉄道計画」で、もう1つは、首都クアラルンプールで展開する大規模都市再開発計画「バンダル・マレーシア」だ。
どちらも中国にとっては、一帯一路の最重要プロジェクトの一部。マレーシアにとっては、親中のナジブ前政権時代に談合密約で、契約完了済の事業。
工事も開始されていて、バンダル・マレーシアは、いくつかの傘下プロジェクトがほぼ建設完了の案件。両者とも再交渉は極めて不可能とされてきた。
日本ではあまり知られていないが、バンダル・マレーシア計画は中止前、日本企業も入札に参加していたクアラルンプールとシンガポールを結ぶ高速鉄道計画(HSR)を含んでいる。
(今回、バンダル計画全体の継続は決定したが、日本との激しい争奪戦があるHSRについては延期されたままだ)
今回のマレーシアでの一帯一路の事業復活は、国家存続の命運と習国家主席の面子という2重縛りで一帯一路の生命線を是が非でも保守しなければならない中国と、親中のナジブ前政権以降、最大の貿易相手国に躍り出た中国との経済貿易、外交関係を維持したいマレーシアの双方の利害が一致した結果だった。
また、マレーシアから見れば、前政権から引き継いだ1兆リンギに及ぶ債務を抱え、中止すれば多額の賠償金が発生する事態に陥るのを防ぐ意味もあった。
一方、中国の対応も米国などからの「債務の罠」批判を受けて軌道修正せざるを得なくなっている。