調圧水槽と地上をつなぐ116段の階段

 地上から調圧水槽に降りる階段は116段。帰りは同じ段数をのぼらなければならない。階段の途中から視界が開け、巨大なコンクリートの空間が目の前に現れる。

「地下神殿」こと調圧水槽の内部。左奥に見える黒い縦長の取込口の奥に排水ポンプがある

「地下神殿」に降り立つとひんやりとした空気が顔にあたる。筆者が訪れたのは桜の開花前、気温が15度ぐらいの時期だが、外にいるよりは確実に寒く感じた。真夏であっても内部は16度程度にしかならないという。

 コンクリート製の柱の断面は円ではなく、7m×2mという長円の形をしている。水流を正面から受ける側の幅を狭くすることで、抵抗を減らしているのだ。重さ500トンの柱が59本そびえ立つ空間は、荘厳な雰囲気とともに圧倒的な存在感を放つ。

 天井部は厚さ3mのコンクリートの上に1.5mの土を盛った2層構造になっており、冒頭のサッカー場がこの上にある。

堆積した土砂は毎回掻き出す

 首都圏外郭放水路は2002年に一部が完成して運用を開始した。これまでの17年間に114回稼働したので、年間平均で約7回、この地下神殿が水で埋め尽くされたことになる。

 流れ込むのは河川の水なので、ゴミや土砂が混じっている。立坑に入る手前で大きなゴミは取り除かれるが、土砂はそのまま調圧水槽に流れ込む。このため調圧水槽内の水が排水された後には、土砂が2~3cmたまった状態になるという。見学時は当然水のない状態だが、土砂は見当たらない。聞いてみると、残った土砂は毎回手作業で掻き出しているそうだ。

重機を入れるための天井の開口部。ここからクレーンを使って降ろす

 そのほか年に1回程度、冬の雨の少ない時期にはブルドーザーなどの重機を使った掃除も行われている。