ネットとSNSで企業の裏の顔が可視化された

 従来は企業が裏側で何をやっていようと誰も気にしなかった。しかしインターネットとSNSであらゆることが可視化されると、ブラック企業の実態や食品の大量廃棄など、多くの人が違和感を覚えていたものが容易に目に入る。場合によっては安くて高品質な商品が誰かの犠牲で生まれていることまで見えてしまう。

「違法ではないが問題のあること」

 これをどう扱えばいいか? 「問題のあること」は、モラルに反すること、嫌なこと、不快なこと、腹が立つことと言い換えても良い。SNSが短期間で急激に発達した現在、これは答えの無い問いとして世界中の企業にのしかかっている。

 国内では女性をネタにした広告が度々炎上しては、広告主の大企業が謝罪に追い込まれた。海外ではバーバリーが大量の在庫廃棄で批判を受けている。いずれも違法行為ではないが、金儲けのために不快なことやモラルに反したことは許されるのか?という従来のコンプライアンス(法令順守)よりさらに進んだ、そして全く異なる対応が求められる。

 近年CSR(企業の社会的責任)やフェアトレード、エシカル等のキーワードが聞かれるようになった理由も、平たく言えば「キレイに儲けているのか、汚く儲けているのか」について、消費者が以前よりもはるかに敏感になったからだ。

 レピュテーションリスク(評判の低下で業績が悪化するリスク)とも言われるが、要するに「炎上しないように気をつけて経営しましょう」という話だ。セブンイレブンはそのリスクに鈍感過ぎた。

 今でも経営陣は「違法行為はやってないのになぜこんなにうちだけ叩かれるのか? ビジネスモデルは何十年も前から変わっていないのに!」とトンチンカンな認識でいるかもしれない。だからこれだけ嫌われ、批判にさらされながら今なおまともに対応できずにいる。

 炎上リスクを考慮して会社を経営する――ネットとSNSの存在を考えれば必然的な流れと言えるだろう。

「今回の騒動でコンビニのビジネスモデルが論じられていない」と前回書いたが、法的な側面もほとんど論じられていない。

 フランチャイズビジネスを実質的に規制している独占禁止法の観点、労働組合の結成が一時的とはいえ認められたオーナーの労働者性、そしてセブンイレブンの社長交代前後で語られた24時間営業を止めたいお店は「80店」あるいは「96店」という謎の数字などの側面だ。

 筆者の「オーナーは経営者なのだからトラブルが起きても自己責任ではないのか」という認識が大きく変わったきっかけがオーナーの労働者性だが、ここは特に重要な論点となる。これらの問題については稿を改めて言及したい。

※筆者はコンビニ各社について、過去のアルバイト勤務と消費者としての利用を除いて、各種取引、株の保有(過去も含めて)、把握する範囲で親族の勤務等の利害関係が無いことは明記しておく。