東京や大阪などの大都市圏では中国系住民が増え続けているほか、東京都江戸川区の西葛西周辺の団地では、インド系住民が急増している。江戸川区内の団地でインド人が急増したのは、今世紀に入る直前のころだ。きっかけは、コンピューターが誤作動する「2000年問題」だった。これに対応するため、IT関連の技術力が高いことで知られるインドから技術者が多数来日した。

扇大橋から望む荒川(出所:Wikipedia

 その際、居住地として人気を集めたのが江戸川区の団地だった。都心に近いという「地の利」、さらに新興住宅地の葛西周辺は古くからの住民も多くないために、新参者を異端視するような「しがらみ」も少なかった。もちろん、外国人を入居差別することのない団地の特性もある。

聖地ヴァーラーナシーを流れるガンジス川(出所:Wikipedia

 それにくわえて、来日したインド人に同地が好まれる理由がもうひとつあった。付近を流れる荒川の存在である。ゆったりとした川幅を持って東京湾に注がれる荒川が、ガンジスの風景と重なるというのだ。それが来日インド人の間で話題となり、リトルインディアが形成される大きな理由のひとつとなったといわれる。外国籍住民は今後も増え続けることだろう。

団地は移民のゲートウェイ

 2018年末、在留資格を新設する入管法改正案が臨時国会で成立した。人手不足業種の現場は、これまで実習生や留学生によってまかなわれていたが、それだけでは足りないとして、あらたに「特定技能」なる在留資格を設け、最長10年間、単純労働分野における外国人の雇用が可能となったのだ(技能実習生は最長5年)。

 今後5年間で、約35万人に及ぶ外国人労働者の受け入れが見込まれる。「これを後押ししたのは経済界。盛んなロビー活動の成果だった」と話すのは全国紙の政治部記者だ。日本商工会議所をはじめ、人材不足に悩む中小企業を抱える経済団体が官邸を動かしたのである。