丁髷を結い、大小の刀を携えた侍が、初めて異国に足を踏み入れ、西洋の最新文明に触れる、それはまさにカルチャーショックの連続だったに違いありません。
1年にも満たなかった「万延」の元号
港に迎えに現れた豪華な馬車。矢のように速い蒸気機関車に乗ったときの衝撃。シャンデリアが吊るされた西洋式のホテルで、初めて使った水洗トイレやシャワー。熱帯で振る舞われた氷入りのオレンジジュースの美味しさ。ワシントンやニューヨークで受けた市民たちの大歓迎。美しいドレスを身にまとった西洋婦人たちのキッスの嵐・・・。
日記には各地で見聞きした出来事や、珍しい習慣、風俗について生きと、具体的に記されていました。
また、長崎海軍伝習所でオランダ人から最新の航海術などを学んでいた鼎は、その知識を生かし、航海中の船位、天候、風向きのほか天文学に関する事柄を毎日緻密に記録していました。大砲などの武器や最新の軍事施設等についても鋭く観察し、記述しているのにも驚かされました。
幕末期の元号のひとつである「万延(萬延=まんえん)」は、日本における外交史の中で、ぜひとも記憶にとどめておきたい重要なキーワードだといえるでしょう。
ちなみに、「万延」は、翌1861年2月19日に「文久」へと改元されたため、わずか11カ月間でした。江戸時代の元号は全部で35あるのですが、そのなかでは最も短かったということになります。
さあ、間もなくお披露目される「平成」の次の元号、果たしてどんな時代になるのでしょうか。