社員のエンゲージメントも高める

山碕峻太郞(やまざき・しゅんたろう)氏。リクルートキャリアに新卒入社。1年間中小企業に向けて求人広告の新規開拓営業を行った後、インフラ業界、自動車業界、金融業界など幅広い業界大手企業に対する人事課題のコンサルティング営業を担当。退職後、代表の岡田祥吾氏とGRITを創業し、現在、GRIT副社長を務める。

 このような全社員を巻き込んだ採用活動には、どのような狙いがあるのだろうか。

 山碕氏は、まず採用内定後の承諾率の高さ(辞退率の低さ)を挙げる。現在、採用の承諾率は約97%で、内定を出したほぼ全員が辞退せずに入社している。

「フランクな雰囲気の1次面接で、働いている人たちが楽しそうだと、志望者が直に感じるんです。その結果、2次面接、3次面接へ進む際には、弊社が第一志望になっているので、必ず承諾してもらえるのです」(山碕氏)

 また、この採用方法のメリットとして、入社してから1人前になるまでの期間が大きく短縮できるという。

「新入社員には会社へのフィットと仕事へのフィットの両方が必要となります。弊社では、面接の段階から雰囲気が伝わっているので、会社へのフィットはすぐにできます。そのため、仕事へのフィットだけに集中できるので、約2カ月で十分1人前になることができます」(山碕氏)

 さらに、新入社員だけでなく、面接を担当する社員の側にもプラスの影響があるという。

「自社の魅力を伝えてフィードバックをもらえる機会を持つのは、会社へのエンゲージメントを高めると思っています。面接に来た人に自社の魅力や取り組みを話すと、『すごく楽しそうですね』などと言われますよね。そうすると、自分はそんな楽しそうな会社で働いているんだ、と感じられるのです」(山碕氏)

 だが、社員は面接だけでなく、当然、他の業務も抱えている。人事部だけでなく他の社員も面接に巻き込むとなると、社員の抵抗はなかったのだろうか。

「経営陣が、入社の時から事あるごとに『採用はすべてである』と言い続けています。あと、社員も同じ採用の過程を経て『この会社、いいな』と思って入社しているので、重要性は理解されやすいですね」(山碕氏)