(5)再エネ買取総額の上限の設定

 冒頭で書いたように、19年度の再エネ買取費用の総額は3.6兆円、再エネ賦課金の総額は2.4兆円。消費税1.3%分に相当する資金が再エネを買い取る費用に充てられているのが実態である。

 今のままでは、再エネ買取総額は20年度には4兆円を超えてしまうだろう。政府見通しでは、再エネ買取総額が4兆円に達するのは30年頃のことだが、それより10年も早く大きな国民負担が植え付けられてしまうことになる。

 今後、再エネ産業が国民理解を得続けていくには、再エネ関連コストに係る負担を抑制することも急務である。そのためにも、再エネ買取費用の総額に上限を設定することも真剣に考えるべきだ。

(6)系統増強財源の捻出策の構築

 再エネ大量導入による電力コスト上昇を緩和するためには、安価な既設原子力・石炭火力発電の稼働率向上を図ることが有効となる。そのために、①現状で原子力規制委員会の新規制基準に適合していなくても、一定の猶予期間内に適合することを条件とした上で、原子力発電再開を容認する、②CO2低減効果が高い「高効率石炭火力」の新設・建て替えに関しては、環境アセスメントを迅速化・簡素化する、といった規制運用の改善を断行していく必要がある。

 原子力発電・石炭火力発電の稼働率を上げることで安定した財源を捻出し、それを再エネ振興のための系統増強財源に充てるべきだ。

「原発に補助金」報道の読み方

 なお、3月23日付け朝日新聞は、『原発支援へ補助制度案 売電価格上乗せ 経産省検討』との見出しで、『温室効果ガス対策を名目に、原発でつくった電気を買う電力小売事業者に費用を負担させる仕組みを想定しており、実現すれば消費者や企業が払う電気料金に原発を支える費用が上乗せされる』と報じた。

 この記事の真偽については現時点では定かではない。だがいずれにせよ、原子力発電所には適切な総括原価方式を再び採用し、的確な投資回収システムを復活させるべきだと筆者は考える。それは「原発推進派」とか「脱原発」とかいったイデオロギー的な視点ではなく、安定した電力供給のためには、現時点では既設の原子力発電所を稼働させることが避けられないと信じているからだ。それは、電力需要者である企業はもとより、一般消費者にとっても大きなメリットがある。実際、原子力発電所が再稼働し始めた関西・九州地域で電気料金引き下げが実現している。その実績からしても、原子力発電事業の持続性・安定性の確保により需要家はその恩恵を確実に体感できると言える。

 ちなみに、再エネFITによる買取価格は、再エネの各電源ごとに、事業が効率的に行われた場合に通常必要となるコストを基礎に適正な利潤などを勘案して定められることになっている点で、一種の総括原価方式であると言える。そこも留意しておくべきだろう。

 福島第一原子力発電所事故以降、脱原発の空気が異常な形で蔓延する中、“再エネvs原子力”という不毛な対立が煽られてきた感がある。

 そうではなく、原子力と再エネの共存を図る「国産エネルギー政策」を推進すれば、再エネ関連コスト負担問題も相当程度は解決に向かう。

 以上のことは、政治の意志で今すぐにでも実行できることだ。