東日本大震災の翌2012年に始まった再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)。太陽光や風力など再エネで発電した電気を電力会社が長期間にわたって一定価格で買い取るというものだ。
制度開始当初(2012〜14年度)、買取単価は世界的にも非常に高く設定されていた。その頃にFIT認定(発電開始日から20年間の買取保証)を受けた太陽光発電事業のうち、すでに発電を開始しているのは約3000万kWだが、一方で未だ発電を開始していないものも約2400万kWある。
つまり、2012〜14年度のFIT認定済み太陽光案件のうち、4割強は未稼働なのだ。これら“未稼働太陽光”が仮に全て稼働し始めたとすると、その売電収入(=買取費用)は年間約1兆円にもなると試算される。
買取費用の原資は、消費者が毎月支払う電気料金に“賦課金”として上乗せされる。再エネ普及に伴って電気料金も上昇し、最近では、賦課金は消費税1%分より高くなった。再エネ買取に係る消費者負担は、今後さらに増えることになる。
価格低下激しい太陽光パネル
これに対して、FITを所管する経済産業省は昨年、約1700万kW分の“未稼働太陽光”の認定を失効させるなど、厳しい姿勢に転じた。近年、太陽光パネルの価格は劇的に下がっており、高値の買取価格のままで安い太陽光パネルで発電を開始すれば利潤が大きくなり過ぎるというのが、その主な理由だ。この時は、試算値で年間約7700億円の消費者負担増が抑制された。
さらに今、約2400万kWの未稼働太陽光の取扱いに関して、経産省は、消費者負担増を抑制するため、未稼働太陽光の買取条件の改正案を提起している。具体的には、
・「電力会社への接続工事申込みの申請」が2019年1月下旬頃までになされ、
・「電力会社による接続工事申込みの受領」が2019年3月末までになされた案件
でなければ、買取単価を大幅に引き下げ(40〜32円/kWh→21円/kWh)、かつ運転開始期限を2020年3月末にするというものだ。