ところが当の藤浪は何から何まで一挙一動に注目を浴びることに「ウザい」という思いを抱くようになり、それがところどころで見え隠れするようになっていったという。
「飼い殺し」か「引退」か
実際に「入団当初から“タイガース愛”という言葉に対し、露骨に嫌悪感を見せるような感じになっていた」と振り返った古参の阪神OBは、こう続ける。
「ルーキーイヤーの年から、ちょうど大阪桐蔭の先輩・西岡(剛)がメジャーリーグから日本球界へと復帰し、奇しくもタイガースで同じユニホームを着ることになった。
藤浪にとって、それが幸か不幸かプレーしやすい環境になったのは間違いない。西岡は生え抜きではなく、いわゆるチャラいタイプでタイガース色に染まっている選手ではなかった。そんな先輩から公私にわたって可愛がられたこともあって、藤浪の“阪神離れ”、もとい“阪神嫌い”の性格に拍車がかかっていった流れは多くの阪神関係者が知っている事実だ。
そして段々と力の衰えとともに西岡のチーム内における求心力が低下していくと藤浪も一定の距離を置くようになったが、今度はそのタイミングであの金本(知憲)監督が2016年シーズンから指揮官に就任した」
ちなみに16年はオフに“黒田イップス”が呼び起こされてから臨んだシーズン。ここから藤浪の低迷が現在まで続くことになるのだが、その裏側ではチーム内からは「闘将と呼ばれた金本監督の高圧的なコミュニケーションにも困惑し、カミナリを落とされるたびにどうしていいか分からなくなってヤル気を失いつつあった」との証言も出ていた。
すでに阪神内部はお手上げ状態で「藤浪の再生はもうどうにもならない」「矢野(燿大)監督も藤浪を計算に入れておらず、一軍の戦力とみなしていない」などとささやかれ、諦めムードが漂い始めている。そうなればもうトレードしか道はなさそうだが、致命的な死球連発を招くノーコン病にさいなまれている以上、獲得に名乗りを挙げる球団も現れにくいだろう。
このまま「飼い殺し」になるか、もしくは「引退」かーー。幸いな点は藤浪自身も無期限の二軍調整を自ら志願したことだ。何としてでも浮上のきっかけをつかみたいという意思が残されているならば救いである。崖っぷちに立たされた藤浪が復活の扉を開ける方法はたった1つしかない。それは自分自身が原点に立ち返り、重圧に打ち勝って何事にも動じない強靭なメンタリティを身につけ、今度こそ制球難を克服することである。