シリコンが比較的安いのはシリコンを溶かした液体からそのまま結晶を作ることができるからだ。
しかし、シリコンの結晶でも、炭化ケイ素や窒化ガリウムに比べれば安いものの、普通の工業材料に比べれば高価である。
その理由は、シリコンは融点が高いため溶かすのに摂氏1500度もの高温が必要であることや、純度管理が非常に厳しいため、厳密に管理された清潔な環境が必要であることである。
液体からでき、温度が高くなく、超清潔な環境も不要であれば、安くできる。
フロスフィアのミストドライ法はまさにそうした製法である。
ミストドライ法は秘密の溶媒に酸化ガリウムを溶かし、酸化ガリウムと結晶構造が似たサファイア基板に霧状にして吹きつけて結晶を作る。
サファイア基板に降着する寸前に溶媒を乾燥させることで、基板の上に酸化ガリウムの結晶が成長する。
この溶液、常温で液体なもので、蒸発する温度も1500度どころか数百度にもならないものだという。さらに、結晶を作る環境は普通の空気中である。
いかにもコストが高そうな部分は何もないのである。結果として、面積を小さくできることも考慮すれば、シリコンと同等の価格で同じパフォーマンスの半導体を作れる見通しだそうだ。