もちろんそれだけでも省エネ効果は発揮できるが、これでは実力のすべてを出し切れない。

 ところが、フロスフィアは酸化イリジウムを使ってP型層を作ることにも成功したのである。酸化ガリウムのトランジスタを作れるようになったのだ。

 これで、酸化ガリウムを使ったパワーエレクトロニクス機器実現に向け、技術的な準備は整った。

本当にすごいのは低コスト

 炭化ケイ素でも窒化ガリウムでも技術的課題はあるにしても、もっと問題なのはコストである。

 両者とも、鉄道車両、高級サーバーの電源、人工衛星などコストが高くても採用可能な用途ではすでに大活躍している。

 しかし、コストの厳しいハイブリッド車や低価格化が進む家電やデジタル機器では、炭化ケイ素や窒化ガリウムがいかに高パフォーマンスでも受け入れにくい。

 コストは、新技術の前にいつも立ちはだかる壁、いや、新技術でなくてもものづくりに関わる人々全員が、日々、頭を悩ませ、胃を痛くするものづくり最大最強の敵である。

 フロスフィアのすごいところは、新技術の多くが敗退する難敵、高コストをすでに克服してしまっていることである。

 炭化ケイ素と窒化ガリウムのコストが高い理由は、密度の小さい気体から結晶を作っていることにある。

 密度の小さいものからできてくるものは、当然、少ないので、時間がかかる。