岩政大樹。元日本代表、鹿島アントラーズでは3連覇を経験。現在は解説者として活躍。「PITCH LEVELラボ」などサッカーを語り合う場所を作るなど精力的に活動している(写真はPITCH LEVELラボの際の岩政氏)

弱音が伝わらない空気感

 また特筆すべきは練習に向かう選手たちの姿勢です。練習の後に話を聞くと、みんな口を揃えて「きつい」と漏らします。しかし、練習中にネガティブな空気感がピッチ内に出てこないのです。それは午前のシャトルランのときも同じで、これが実はサッカーチームにはとても大きな要素となります。

 反町監督の作るチームにはいつも献身性や結束感など、強い空気感が感じられます。それを作るのは日々の練習です。ピッチから弱音が少しも浮かび上がってこない練習の空気感こそが、率いたチームを全てJ1昇格に導いてきた反町監督の結果を出す秘訣でしょう。

 加えて、今年の松本山雅FCは選手層が厚くなり、各ポジションで同じレベルの選手が競争をするスカッドが出来上がりました。練習を見ていても、誰がスタメンとなっていくのか予想が非常に難しいと思いました。

 そのことを反町監督に伺うと、「やっとそのようなチーム編成を作れるようになってきた」と監督自身も手ごたえを感じているようでした。

 サッカーチームは大体、1週間に1試合。それ以外は練習をしています。試合だけでは足りません。練習での競争力がチームの成長につながっていくのです。反町監督のお話からも、練習の中で選手たちが自分たちで切磋琢磨することで生まれるチームの雰囲気をとても大事に思われていることが分かりました。

 理論や戦術などサッカーに大切なことはたくさんあります。ただ、勝つチームには決まって勝つ雰囲気というものがあります。

 そのためのマネージメントが反町監督の練習にはいたるところに感じられて、今回の練習取材も「サッカーの本質」みたいなものを学ばせていただく機会となりました。