一度目とは違う松本山雅のスタイル
反町監督の松本山雅FCは、初めてのJ1昇格を果たした2015年のときとは違うプレーモデルの中で2度目の昇格を目指し、実際に実現してみせました。
私は反町さんと松本山雅FCにとって「J2再挑戦」となった2016年シーズンに対戦しましたが、以前の、“まずは相手陣地のコーナーフラッグ付近を目指していく”攻撃はあまり見られなくなり、相手の内側の急所となる場所をまず目指して攻撃を始め、そのためのパスのルートも明確に設定してきたように感じていました。
練習で見られたのは、まさにそうした判断基準の中でプレーをする選手たちの姿でした。
そして、肝はその先です。パスで相手の懐に入れたら、攻撃側にはスプリントをしてアクションを起こしていくこと、逆に守備側にはプレスバックや背後にスプリントして戻ることが徹底されていました。
ここが午前のトレーニングと合わさって一つのセットとなり、選手たちの無意識に刷り込まれていきます。それが松本山雅FCのプレーモデルを構築していく。そのためには、今よりもっと「行って帰る」ことができなければいけない。そのための午前練習だったということです。
また、各選手の判断の部分は、反町監督から実に歯切れのいい指示が選手たちに伝えられていきます。「どこにパスを出すか」だけではありません。「どのタイミングで誰と誰がつながっておくべきだったか」、「どこに判断の基準を置いておくべきだったか」。そのような一つ一つが、ゲームのリズムが失われないように留意しながら、的確に提示されていきました。
ゲームのルールも、最初は前方と後方で違うルールでプレーさせることで、「狙いとする攻撃が出やすい設定」にしておき、その後で実際のゲームに近い形に変えていきました。
午前から午後にかけて、あるいは午後の練習の頭から最後まで、実に流れのある練習が作り上げられていて、選手たちが、実際の試合につながっていく感覚を覚えやすい練習となっているだろう、ということがよく分かりました。