サッカーには野球のような「アマチュアとプロの壁」がないので、例えば高校年代の「高円宮杯U-18サッカープレミアリーグ」のようにJ下部と強豪高校のチームが対戦するリーグ戦がある。J下部の育成が基準になり、高校サッカーの指導レベルが上がっている。

 プレミアリーグのもう一つの効能は、高校の部活でプレーしている選手がJリーグ・スカウトの目に触れやすくなったことだ。かつては選手にとっても夏のインターハイと冬の高校サッカー選手権だけがスカウトの目に触れるチャンスだったが、今は冬の選手権に出場している有力選手の大半がJリーグのチームから「内定」をもらっている。

 一発勝負のトーナメントで勝ち上がらないと声がプロから声がかからなかった時代は、選手も目の色を変えて選手権を戦っていたが、今は負けてもニコニコして相手の健闘をたたえている。選手権が終われば彼らはすぐJリーグのユニフォームに袖を通し、再びピッチで合間見えるからだ。

「決勝前の休養日」でまともな対応と言えるのか

「散り際の美学」を求める諸兄は、こうした光景に物足りなさを感じるかもしれない。負けた選手がさめざめと泣き、グランドの土を袋に詰める光景は、一発勝負のトーナメントでしか見られない。いつの時代も「特攻」はドラマチックで観る者の胸に迫る。

 だが筒香は言う。

「(日本では)骨格のできていない子どもたちの大会はほとんどトーナメント制で行われているが、子どもたちを守るには、一発勝負のトーナメント制をやめてリーグ制の導入をしたり、球数制限や練習時間を決めたりしたりする必要がある」

「一発勝負のトーナメント制」すなわち「甲子園」である。育成を度外視し学校や指導者の名誉とメディアの興行のために、「教育」の名の下、無償で高校生に炎天下で800球を投げさせる。そんな「甲子園」を「そろそろやめたらどうか」と筒香は言っている。全く同感である。

 筒香の記者会見の翌週、朝日新聞スポーツ面に「甲子園、球児の負担軽減図る」という記事が載った。全国高校野球選手権大会(朝日新聞社、日本高校野球連盟主催)は選手の負担を減らすため、従来の大会日程を見直し、決勝前に休養日を新たに設ける方針だという。地区予選からの連投、連投でボロボロになった投手の肩が、1日、2日の休養で回復するはずがないだろう。これもまた「ちゃんと配慮はしましたよ」という「大人の都合」である。