特別なスポーツと違って、ウォーキングは誰でも取り組みやすい。そのため、ウォーキングラリー以外にも、ノルディックウォーキングのイベントを企画したり、事業所の周りにちょっと珍しい植物を見ながら歩ける遊歩道コースを作るなどして、ごく自然に“たくさん歩きたくなる環境づくり”を推進している。

 一方、地方都市などで自動車通勤の人が多い職場では、脚力、いわゆる足腰の弱さが課題になりがち。この課題解決に取り組んだのが、2015年、2016年に行った自転車通勤プロジェクトだった。参加者は佐倉、鈴鹿エリアの計30名。イベントの翌年の健康診断では、不参加だった社員に比べ、体重、腹囲、中性脂肪の項目で、統計的に有意な改善効果が出た。プロジェクトの参加直前と直後の比較では、脚筋力、体脂肪率、内蔵脂肪レベル、中性脂肪、γGTPなどの数値が10%以上も改善。身体機能だけでなく、仕事のパフォーマンスについても改善が認められた(下の図)。

社員は活き活き働いているか?それを測る指標とは

 そんな同社は、社員の活き活き度や、パフォーマンスをどのように評価しているのだろうか。浅野さんが1つのKPI指標として示してくれたのが「プレゼンティーズム」だ。社員が出社していても、何らかの不調のせいで心身が思うように働かず、本来発揮されるべきパフォーマンスが低下している状態を示すもので、近年、産業衛生分野で注目されつつあるという。ただ、これは心理尺度のため、景気や社会のムードなどに影響を受けたり、自覚症状がないと数値に表れないため、データの読み取り方に注意は必要だそうだ。

 もう1つが「ワークエンゲージメント」。これも耳慣れない言葉だが、仕事に関連するポジティブで充実した心理状態のことで、 (1)仕事に誇り(やりがい)を感じる、(2)仕事に熱心に取り組む、(3)仕事から活力を得て活き活きしている──状態を指す。このワークエンゲージメントについては、個人と職場の数字を両方ともチェックする。これらの3つの要素がどう変動するか、様々な要因を考えながら、数字を慎重に読み取っているという。

職場診断の結果例

 健康経営優良法人に選ばれた2017年からは、就活学生が会社の選択理由に健康経営を挙げることも増えてきた。4人で始まったチームは、今や10人規模の部署に成長。健康経営への評価について、浅野さんはこう話す。

「当社の健康経営への取り組みに関心を持つ人が増え、この1、2年で健康リテラシーが高い人が入社してくるようになりました。また、社員のみなさんの歩数や足腰などのデータを見ると、着実に身体能力が伸びている効果も実感します。健康になるために行動を変えるのは、実際はなかなか大変なこと。だからこそ、人生の長い時間を過ごす会社にいることによって、自然に健康づくりにつながるとなれば、嬉しいですよね。これからも、そんな環境づくりを続けていけたらと思っています」