ワーク・ライフバランス代表取締役社長
900社以上の企業へのコンサルティング実績を持ち、残業を減らして業績を上げるコンサルティング手法に定評があり、残業削減した企業では業績と出生率が向上している。 「産業競争力会議」民間議員など複数の公務を歴任。2児の母
2019年4月から「働き方改革関連法」が順次施行され、「罰則付き残業時間規制」が導入される。だが、現場では「残業ゼロなんて夢物語だよ」との声も少なくない。特に人材不足に苦しむ中小企業では、マネジャーがプレイヤーを兼任したり、1人の社員が複数の業務をこなさなければビジネスが回らないというケースが少なくない。そんな状況で本当に「残業ゼロ」を実現できるのだろうか。
小室淑恵氏が代表取締役を務める株式会社ワーク・ライフバランス(東京都・芝浦)は、これまで約1000社に働き方改革コンサルティングを提供し、「残業時間の大幅削減」と「業績向上」を実現させてきた。2018年9月に新著『プレイングマネジャー「残業ゼロ」の仕事術』(ダイヤモンド社)を上梓した小室氏に、プレイングマネジャーの仕事に焦点を当てて働き方改革を起こすためのポイントを語ってもらった。前編(「生産性向上のカギはマネジャーが頑張り過ぎないこと」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54853)に引き続き、後編ではプレイングマネジャーが上層部を納得させながら「働き方」を変えていくための方策を明らかにする。(取材・構成/前田 浩弥)
「がんじがらめ」の中でどう手を打つか
働き方改革は、整理整頓やスケジュールの共有など、自分たちで完結できる「小さなこと」から着手し、着実に成果を挙げていくことが重要です。そうすることでメンバーのモチベーションを高めることができ、より大きな改革にも進みやすくなります。
ただ、これだけではどうしても限界があります。自分たちのチームの「働き方」を変えるには、上層部の協力が必要不可欠になってきます。
とはいえ、組織に生きる会社員としては、上層部に「モノを申す」のはどうしてもはばかられるものです。そのため、現場に非効率性を生み出している業務フローが長く延命してしまっていることもあるでしょう。また残念なことに、「働き方改革」の必要性を十分に認識していないトップがまだ多いのも現実です。
「上層部の協力を仰ぐ」と言うのは簡単ですが、いざ実行しようとするといくつもの障害が立ちはだかっていることに気づきます。
中には、プレイングマネジャーが「働き方改革」を起こすべくマネジメントに力を入れようとしても、そもそも会社からのノルマ自体がプレイングマネジャーに重く課せられている場合もあります。このような会社では、「マネジメントに時間を回したいから、自身のノルマを減らしてほしい」と訴えても、上層部は「自分がラクをしようとしているだけではないのか? 第一、今までこのノルマ設定で会社はうまく回っていたではないか」と理解されない場合がほとんどでしょう。