「働き方改革」を起こすにはどうにも困難な状況に思えますが、それでも「打てる手」は存在します。

まずは上層部の「不安」を解消する

 以前、小さな出版社の社員から相談を受けたことがあります。その事例をもとに考えてみましょう。

 その会社のある部署は、プレイングマネジャー1人にメンバー4人の5人構成でした。メンバーには「1人あたり年間8冊の本をつくる」、プレイングマネジャーには「年間9冊の本をつくる」というノルマが課せられています。先ほどお話ししたように「プレイングマネジャーに、ノルマがより重く課せられている」事例ですね。

 この部署は1年間で、メンバーが8冊×5人=40冊、プレイングマネジャーが9冊、合計49冊の本をつくることが求められています。

 このノルマを設定する上層部の心理を考えてみると、「会社の利益を確保するためには49冊分の売り上げが必要だ。何としてもこの部署で49冊の本をつくってくれ」というメッセージが伝わってきます。つまり上層部としては、「この部署が49冊の本をつくる」ということがとにかく大事なのです。

 そこへ、プレイングマネジャーが「マネジメントに力を入れたいから、年間のノルマを6冊にしてくれ」と訴えたとします。

 上層部はどう反応するでしょうか。「部署として1年間につくる冊数は46冊になってしまうではないか。減った3冊分の売り上げと利益はどう補填してくれるんだ」という議論になってしまうのは、目に見えています。いくら「46冊で49冊分の売り上げを達成して見せます!」と宣言したところで「どこにそんな保証があるんだ。そんな話で納得できるか」と突き返されてしまうでしょう。

 上層部が絶対に譲れない目標はトータルで「49冊」というボリュームの達成です。そもそも人口が減少していく時代の中、ボリュームで売り上げや利益を管理するのは時代遅れという説もありますが、いきなり「理詰め」で変えようとしてもうまくはいきません。まずは上層部の不安材料である「49冊」というボリュームを、部署内の工夫で達成する要があります。