大阪の経済がこれほどひどくなったのは、もともと大阪に本社を置いていた企業が、東京に移ってしまったことも原因だ。裏を返せば、それだけ大阪が魅力ない街になってしまっているのだ。
万博開催を契機に持続的な経済発展に結びつけようと思うのなら、まずは企業が根付くような環境を作ることが大切だろう。法人税の優遇や優秀な人材を呼び込む雇用体制など、企業や研究機関を呼び込むような施策とワンセットでなければならない。万博終了後も「やっぱり事業をするなら大阪だ」と思わせるくらい企業にとって魅力ある街にしないことには本当の経済発展は望めない。万博を開催しただけでは企業が集まってきたり、転入してくる世帯が増えてくることはない。
カジノと万博、だけでは大阪経済は甦らない
大阪万博には、政府の思惑も絡んでいる。1964年の東京オリンピックで敗戦国からの復活を世界にアピールした日本は、6年後の大阪万博で先進国としての姿を各国に知らしめた。事実、それなりの経済効果もあった。今回も昔の夢を見ようと、2020年の東京オリンピックと2025年の大阪万博をセットで考えている。ただし当時と今では経済環境がまるで違うことは注意しなければならない。
政府は2020年の東京オリンピックに、景気を大きく刺激する効果を期待している。オリンピック終了後の反動で景気の谷がやってくることも織り込んでいる。その緩衝材として、5年後の大阪万博でもう一度景気を押し上げようと目論んでいるのだ。
しかし2000年代に入って以降の各国の事例を見てみても、万博の後に景気が長続きした事例は少ない。唯一の成功例は2010年の上海万博くらいだろう。
1990年には、大阪で国際園芸博覧会である「大阪花博」(大阪花と緑の博覧会)が鶴見緑地(大阪市鶴見区)で開催された。花博自体はまずまずの成功だった。ところが、この時に作ったインフラである地下鉄・長堀鶴見緑地線は現在、赤字路線なのだ。博覧会に合わせて作った交通インフラが、その後の地下鉄経営を圧迫しているのである。これもつい28年前の出来事なのだ。
2025年の万博開催に合わせて、今度は夢洲まで地下鉄を伸ばす計画がある。延伸された路線はその後どうなるのだろうか。
夢洲の万博会場の隣は、IR、つまりカジノの有力な候補地になっている。推進派の思惑通りに進めば、万博開催時にカジノはすでに開業しているはずなので、「2025年はカジノと万博の相乗効果で景気拡大」ということになる。そのときは延伸された地下鉄も活用されるだろう。
ただ繰り返しになるが、大事なのは持続的な経済成長だ。「大阪に来れば企業活動がしやすい」「科学技術が集積していて、研究開発拠点を置くのに最適」と感じてもらえる環境を作ることが大切だ。今の国や大阪府と大阪市には、その施策がまだまだ十分ではない。
国や大阪府、大阪市に望みたいのは持続的な経済発展である。万博誘致に成功したのだから、万博が一時的な打ち上げ花火にならないようにしてもらいたい。その経済波及効果が万博の開催期間だけで終わるのではなく、長く持続するような取り組みをしてもらいたいのだ。
2025年の大阪万博が一時的な打ち上げ花火に終わってしまうと、また経済破綻寸前の大阪に逆戻りしてしまう可能性が高い。大阪の人たちは、そんな悪夢は二度と見たくないのだ。