人種差別的発言や女性を侮辱する発言を繰り返していたトランプ候補に対する痛烈な批判だった。

 「When they go low, we go high」(相手が低俗に出るのなら私たちは品位を保って言動しましょう)

 つまり、「トランプがいかに下品で下劣な言動を繰り返そうとも、ヒラリーさん、あなたは気品を持って振舞ってくださいね」という助言だった。

 元々自分の娘を育ているときに彼女らに口を酸っぱくして言っていた言葉だという。

 「黒人だということで白人から口汚く罵られてもあなたたちは品位をもって接しなさい」という戒めだったそうだ。

 党大会の後、クリントン候補は、ミシェルさんのその言葉を何度か引用して、トランプ候補の挑発をさらりとかわしていた。

中間選挙中に超党派「投票促進運動組織」立ち上げる

 今回の中間選挙中にミシェルさんが動き出したのは7月。「We All Vote」(みんな投票しよう)という超党派の投票促進運動組織を作った時だ。

 9月には自分自身が街に出て、有権者一人ひとりに必ず投票するよう呼びかけた。特に、黒人向けには公民権運動団体など20の組織と組んでキャンペーンを続けた。

 黒人有権者の投票率はオバマ氏が大統領を辞めて以降、急速に低下している。黒人票の7~8割は民主党に行くとされている。

 投票促進運動は超党派と銘打っているが、ミシェルさんとしては黒人の投票率を上げることで民主党候補に肩入れするという狙いがあったことは言うまでもない。

 さらにその「戦略」の背後には、ミシェルさんが心の底に秘めていた「トランプ憎し」があり、中間選挙でトランプ共和党を徹底的に叩きのめすという狙いがあった。それが今回出版された回顧録で明らかになってくる。