ハイテク素材の開発でロシアが日本に勝利――。
ロシア版大本営発表に聞こえかねないもので、筆者の曲筆が疑われそうなフレーズである。
素材産業は日本が現在でも競争力を有する貴重な分野である。ハイテン材、炭素繊維、特殊鋼など、日本製品が世界のトップを走る製品は多い。
一方、ロシアの素材産業はチタンのようにごく稀に優秀なものがあるが、一般的には評価の低いものがほとんどである。
例えば、自動車で用いるロシアの亜鉛メッキ鋼板は、日本で呼ばれる亜鉛メッキ鋼板とはほど遠く、実態は鋼板に「亜鉛が乗ってる」ようなもので、少し曲げるとはがれてしまうそうだ。
亜鉛メッキだけに問題があるわけではない。鋼板の板厚は不均質で、異物の巻き込みも多い。
そのような鉄板を使って高品質なものを製造することは不可能である。ロシアでは日本レベルのものづくりは絶対に無理である。その理由の一つが、素材産業の能力不足である。
しかし、EVで用いられるリチウムイオン電池に性能向上をもたらすとされるカーボンナノチューブの開発では、本当にロシア製品が日本製品に勝ったようだ。
カーボンナノチューブは電流容量や強度で優れた物性を持ち、期待の新素材であった。