しかし、1グラムで数万円、ざっくり金の10倍という高価格だった。そんな高いものを使っては、まともなコストで製品作りができないので、誰も実用的な用途を見つけられなかった。
そんな中、ロシアでOCSiAl社によって、1グラムで300円という低価格でカーボンナノチューブを製造する方法が開発されたのだ。そして、実際に供給体制を整え、本当にその価格での販売が始まっている。
カーボンナノチューブとは
カーボンナノチューブとは、炭素原子が筒状に結びついて、分子サイズのパイプになったものである。
炭素の結晶であるダイヤモンドが示すとおり、炭素原子は原子間の結びつきが強く、それが硬さなどの高い物性をもたらす。
カーボンナノチューブの物性は、耐えられる電流量は銅の1000倍、熱伝導度は銅の約7倍、強度は炭素繊維の8~80倍とされている。
カーボンナノチューブは名前のとおりナノサイズなので、単体では使いようがない。しかし、物性がこんなに優秀なので、少量を他の材料に混ぜることで、性能を大幅に向上できる。
例えば、プラスチックにカーボンナノチューブを少量混ぜれば、電気を流す性質を与えることができる。
混ぜる量は少量なので、透明のプラスチックは透明のままであり、見た目はプラスチックなのに電気を流すことができる。
現在、最も期待されている用途は、自動車のEV化の進展で期待の高まっている2次電池の性能向上である。
カーボンナノチューブには電気が流れやすいうえ、幅に対する長さが長い。これは相互に繋がりを作り、電気の流れる経路を作りやすくする。