この夏の全国のスクリーンの話題をさらった「カメラを止めるな!」。冒頭から息もつかせぬ37分にも及ぶワンカットシーンに、劇中のドタバタがすべて回収される二段構えの構造。映画の常識を壊しつつも、笑いと涙も織り込まれた素晴らしいエンターテイメント作品に仕上がっています。
そんな「カメラを止めるな!」ですが、盗作疑惑でも世間を騒がせました。詳細は省きますが、制作される以前に公演された舞台に酷似しており、その劇団の主宰者に告発されたとのことです。
常に二匹目のどじょうを狙った書籍の発刊が多い出版業界の端くれにいる私は、「盗作」という言葉の響きには麻痺している面があります。しかし、それを差し引いてもこの「カメラを止めるな!」は盗作には当たらないと感じました。
なぜなら、あの二段構えの構造は、地続きの「映像」だからこそうまくはまったもので、分断された「舞台」とは、違った色合いのものだと思うからです。上田慎一郎監督も制作にあたっては舞台からインスパイアされたことは述べていますので、しいていえば「盗作」というより「オマージュ」と呼ぶべき作品なのではないでしょうか。
チャンドラーへのオマージュ作品
などと考えながら、思わず読み返してしまったのが、『THE WRONG GOODBYE―ロング・グッドバイ』(矢作俊彦著、角川文庫)。ご存知、レイモンド・チャンドラーの不朽の名作『長いお別れ』(清水俊二訳 ハヤカワ文庫)のオマージュ作品です。