大事なのは、その人の苦手なことを仕事のできない当人の頭で考えさせないことです。自分の頭で考えて取り組んだ結果が【タイプ1】から【タイプ3】のどれかになってしまうのに、ガラスのハートなので質問や確認してくることができないのです。だったら考えさせるより、指示と確認方法を変えるのが得策なのです。

 最初に、心のバリアを外させましょう。心を閉ざしている限り、相手はこちらの指示を意図通りに受け取ることはありません。成果が出ていないことをフィードバックしたりすると相手は同じチーム内でもあなたを敵とみなします。敵に心は開きません。よって、「よく頑張っているね」と存在を認めてあげることが先決です。認めてくれる人を相手は味方と感じます。味方と認識してもらえれば心を開いてくれます。ここからが本当のスタートです。

 次にタイプに合わせて対応方法を解説します。

【タイプ1】仕事が遅くいつもクライマックス状態の人は自分の頭で考えさせない

 仕事が遅く、いつもクライマックス状態のこのタイプは、自分なりに仕事を一生懸命やっているので「仕事ができない」という自覚がありません。「ちゃんとやっています。夜中まで頑張っているんですから」と、自分のことを褒めてほしいくらいに思っていることすらあります。こういうタイプに自分で考えさせたり、工夫させたりしようとするのはムダです。自分の頭では一生懸命作業に没頭することしかできません。割り切りましょう。

 仕事の内容を、中堅大学の現役学生が一度説明を受けたら実行できるレベル程度に、仕事ができる上司や先輩のノウハウをツール化・フォーマット化してもらいます。そのツールやフォーマットに沿って、上司や先輩社員には作業の指示を出してもらうのです。上司や先輩には「任せて後で自爆されるより、入り口で抑え込むのが一番ですから」と説得し、協力してもらいましょう。

 このタイプはオペレーションに乗って正しく作業することは得意です。「意外に作業のハイパフォーマーに化けるかも」と上司や先輩に伝え、協力してもらえばいいでしょう。

【タイプ2】抱え込んで自爆する人は「どう分かったのか」を相手に言わせてみる

「抱え込んで自爆するタイプ」への対応は簡単です。相手が理解できたかどうか相手の口で言ってもらうことです。「分かった」と言っていても自分の口で話させると、何を理解し、何を理解していないかが浮き彫りになるので、要所の確認ができます。

【タイプ3】間違えても気にしない人は「重要だから確認しよう」と言う

「間違えても気にしないタイプ」は任せた仕事を確認する単位を細かくすればいいのです。自分では間違えたという自覚がないので放っておくとドンドン進めていきます。

 このタイプは、とにかく自分のペースでドンドン進めることが好きなので、「私が間違えるかもしれないと思って、上司や先輩が細かくチェックしようとしている」と悟られると、自己防衛本能を働かせ、誰にも報告せず一人で仕事を進めてしまいます。喜んで報告するように、「重要なことだから、ここで確認しよう!」と伝えるようにすればよいでしょう。

「仕事ができない人」による被害を最小限に抑える工夫を

 いずれにしても仕事のできない人には「期待はしない、しかしバカにもしない」というスタンスで接することです。仕事ができないなりに「頑張っている」ところを認めながら、確認するプロセスを細かくしていくことが最善です。これは仕事ができない人が他部署の場合でも同様です。1つの部署内で全ての仕事が完結することは少なく、いくつかの部署や関係先とのやり取りが発生するからです。細かく確認するプロセスを入れ、考えさせず作業に集中すればできちゃうツールを渡す。部署間を超えた「確認するプロセス」を置くことで被害を最小限にすることが可能になります。

 一番怖いのは仕事ができない人の反乱です。重要なミスを抱え込んで大爆発させたり、パワハラ、メンタル問題で会社に訴えてきたり、外部に社内情報をリークするなどなど。私も、こうした「死なばもろとも」の自爆テロを仕掛けてくる現場を数多く見てきました。

 人は感情の動物です。相手のレベルと心理状況に合わせた大人の対応が、最終的に仕事を速くラクに進め、チームの生産性を上げることに繋がるのです。