ネットを使った選挙介入が、現実的な問題になり始めた。本来、インターネットはオープンな存在であり、民主主義を拡大させる原動力と考えられてきたが、ここまでネットが普及すると状況は変わってくる。ネット上で目に見えない選挙キャンペーンが繰り広げられ、有権者が知らない間に投票先を誘導される時代が迫ってきている──。
民主派を弾圧して独裁を確立したが・・・
今年(2018年)7月にカンボジアで実施された総選挙において、中国がネットを使った選挙介入を実施した可能性があると報道されている(参考:「中国、サイバー選挙介入か カンボジアで『予行演習』」日本経済新聞)。
カンボジアでは2013年の選挙で民主化を掲げる野党が躍進し、フン・セン首相率いる与党・カンボジア人民党は苦戦を強いられた。政権維持に不安を感じたフン・セン氏は、野党の党首を逮捕するとともに、政権に批判的なメディアを次々に弾圧。最終的には強権を発動し、野党を解体に追い込んでしまった。野党幹部の一部は海外に亡命し、今回の選挙は事実上の無投票選挙となった。
日本にあてはめれば戦前のいわゆる「翼賛選挙」なので、与党が圧勝するのは当然の結果といってよい。下院の全議席を与党が獲得しており、上院についてもすでに全議席を確保していることから、カンボジアは事実上の独裁政権に移行したとみなされている。
フン・セン氏はよく知られているように、後に200万人の大量虐殺を行ったポル・ポトの幹部だったが、同派の過激な政策に反発して離脱。その後、ベトナムと旧ソ連を後ろ盾とするヘン・サムリン政権において首相に就任。以後、30年以上にわたって実権を握ってきた。
その意味では、今回の総選挙によって独裁がより強化されただけと解釈することもできるが、内実はそうでもないようだ。