(文:西野 智紀)
ニュース番組を見て憂鬱になる。新聞やインターネットの記事を読んでげんなりする。暗い内容ばかりだからだ。シリア情勢、温暖化、テロに凶悪犯罪、不況、所得格差、貧困、差別、少子化・高齢化、災害。マスメディアは脅威を報道するのが基本だし、これらすべて顕在化している問題であるとはいえ、連日こうしたニュースを見ていると、そんなにメンタルの強くない筆者などはすぐ気が滅入ってしまう。ひどい時代に生まれてしまったものだと思わずにはおれない。
そうしていだかれた悲観論に一石を投じるのが、本書だ。一言で説明すれば、人類がここ2世紀あまりで飛躍的に進歩し、死のリスクが大幅に低下したことをデータとともに示した本である。著者はスウェーデン生まれの作家・歴史家で、グローバリズムと自由貿易の推進を訴え続けている人物だ。本書について彼はこう述べる。
“現代において、私たちは自分の生活を改善する自由を与えられ、それにより世界を改善した何百万もの人々により、ゆっくりした着実で自発的な発展から生じた、驚異的な進歩を忘れてはいけない。それは、どんな指導者も機関も政府も、トップダウンで押しつけられるものではない。”
それゆえ、現代は人類史において最高の生活水準と言える――というわけだ。