米朝会談は「準備万端」 トランプ氏、安倍首相と会談

AFPBB News〕ホワイトハウスの大統領執務室で会談するドナルド・トランプ大統領と安倍晋三首相(2018年6月7日撮影)。(c)AFP PHOTO / Nicholas Kamm

 シンガポールで幕が上がった「マーライオン劇場」は、主役のドナルド・トランプが「会談はパーフェクトだった」と大見得を切ったが、観客たちの表情は凍りついたままだった。米朝首脳会談の最重要のテーマは「非核化」だったはずだ。だが、北朝鮮に期限を区切って核を放棄させ、検証措置を呑ませることはできなかった。

 その一方でトランプと金正恩は、先に南北首脳会談で合意した「板門店宣言」を再確認する形で、朝鮮戦争に事実上終止符を打ち、朝鮮半島の永続的な平和体制を築くと謳いあげた。こうしてトランプ政権は、北朝鮮の強権体制を保証してしまった。さらに交渉関係者によれば、米朝の対話が続く間は米韓合同演習を行わないことを伝え、資金提供の可能性まで示唆したという。

 交渉が進展すれば、資金が流れ込んでくる――。そう金正恩は期待したはずだが、アメリカの懐が痛むわけではない。トランプは「アメリカ・ファースト」の旗を掲げてホワイトハウスに入ったのであり、北への資金提供でもアメリカの納税者にぴたりと寄り添っている。

「必要な資金は日本、韓国、中国が支援してくれるだろう」

 トランプは納税者のカネは一銭たりとも使わないと言い切った。米朝交渉のチーフ・ネゴシエーターたる国務長官のポンペオも北への援助絡みの小切手帖は日本などに回すつもりだ。

ニッポンは「打ち出の小槌」

 シンガポールの米朝首脳会談を控えた6月7日、安倍・トランプ会談がワシントンD.C.のホワイトハウスで行われた。拉致問題に何としても突破口を開きたい安倍晋三はトランプにひざ詰めで次のように迫った。

「日本としてはあなたの対北交渉をできる限り支えていくつもりだ。交渉が進展して北朝鮮が正しい方向に歩み出すなら、経済協力を考えてもいいと思う。だが、拉致問題の前進が絶対に欠かせない。北が拉致問題は解決済みだと頑なに拒み続けるなら、日本政府が北に資金を出すなど国民の理解は到底得られない」

 安倍晋三はこのように述べたうえで、拉致問題さえ解決すれば、2002年に日朝間で交わした「平壌宣言」に基づいて、北への経済協力も考えてもいいと伝えた。交渉上手を自認するトランプは深く頷いたという。