米朝首脳会談の展望をめぐり、北朝鮮情勢に関しての熱い議論がかわされている。つい最近までは世界で最も危険な存在とみられていた北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が、今では平和の使者のように振る舞っている。そんな北朝鮮を、米国のトランプ政権はどうみているのか。米国に対する北朝鮮の軍事脅威は変わったのか。
それらに関する米国側の認識を知るには、今年3月15日に、太平洋統合軍ハリー・ハリス司令官が上院軍事委員会で証言した内容が有力な指針となるだろう。
ハリス海軍大将はそれまでの3年間、インド太平洋の広大な陸海空を管轄する米軍全体の最高司令官を務めた。この統合軍の陸軍、海軍、空軍そして海兵隊は、日本や韓国もその守備範囲とする。とくに在韓米軍は長年、北朝鮮の軍事脅威とは正面から対峙してきた。ハリス司令官が指揮する太平洋統合軍には、その在韓米軍も含まれる。
ハリス司令官はすでに退役と転進が決まっており、太平洋統合軍司令官として議会で証言するのはこれが最後となる。ハリス司令官は上院軍事委員会の席で、アジア太平洋の域内での軍事情勢、とくに米国とその同盟諸国にとっての脅威や危機の現状を議会に向けて報告し、米軍側がその現状に対してどのような抑止や防衛の態勢をとっているかを説明した。そのなかでも北朝鮮についてはきわめて詳細かつ具体的にその軍事動向を報告していた。このハリス証言は、現在の米国側の北朝鮮への総合的な認識だといえるだろう。