歴史的な米朝会談についてはいろいろ語られているが、ここでは少し論点を変えて北朝鮮の軍人の立場からこの問題を考えてみたい。それは、朝鮮戦争が完全に終結したら、最も困るのは北朝鮮の軍人だからだ。
北朝鮮では「先軍政治」が行われている。これは北朝鮮の公式理念で、なににも増して軍を優先する政治を言う。
先軍政治に基づき、これまで人材や資材の多くを優先的に軍に配分してきた。その結果、シンガポールまで満足に飛べない飛行機しか持っていないにもかかわらず、水爆や大陸間弾道弾を造ることができた。
北朝鮮の兵力は約190万人程度とされる。人口は約2500万人だから、人口の約7%が兵役に就いていることになる。これは異常な数字である。現在の日本の自衛隊員の数は約20万人であり、人口の0.16%に過ぎない。日本は世界の中でも特に軽武装の国であるが、平時であればどんな国でも兵士の数は全人口の1%以下である。
全人口の7%もの人材が兵役に就いていては豊かになれない。戦争を終わりにして兵士を生産部門に移せば、経済成長が期待できるはずだ。