東芝のブランド「ダイナブック」は、かつてはノートブックPCでは世界トップに立っていたブランドである。ブランド価値は今でも高い。シャープ、鴻海、そして東芝の「国際垂直分業」と「共創」、さらに「ダイナブック」のブランドが加われば、パソコン市場ではかなりの存在感を示せることになるだろう。

 東芝のパソコン事業は2017年度に96億円の営業赤字だったが、シャープの戴正呉(タイ・セイゴ)社長は「必ず黒字化できる。1~2年以内で黒字化して投資を回収したい」と語っている。その発言、決して大風呂敷を広げているわけではないのだ。

背水の陣で達成した「テレビ1000万台販売」

 ここで復活に至るまでのシャープの軌跡を振り返ってみよう。

 6年ぶりの配当にこぎ着けたシャープだが、2017年度で売上高および営業利益を最も増加させたのは、液晶ディスプレイ事業だった。売上高が前年比29%増、営業利益が前年比10.4倍と大きく増加している。これは、液晶テレビが、特に中国で好調であったためである。

 2016年9月に、シャープは、液晶で非常に挑戦的な計画を打ち立てた。2018年度の世界販売を、16年度見込み比で2倍の1000万台に増やすとしたのだ。シャープの液晶テレビは、2010年度に過去最高の1482万台を達成したが、その後は激減していた。1000万台は挑戦的な目標だった。

 シャープの液晶パネル工場は1000万枚の供給能力を持っている。亀山工場が稼働した時代は、自社液晶パネルを自社ブランド「アクオス」の液晶テレビに用いて、強みを発揮した。しかし堺工場が稼働すると、液晶パネルはアクオスの生産台数を追い越してしまい、液晶パネルを外部に売らざるをえない状況が続いていた。

 しかし、1000万台の液晶テレビを販売するとなると、シャープは自社生産の液晶パネルの全てを自社の液晶テレビに供給しなくてはならない。このため、それまでサムスンに供給することで一息ついていたパネルの外販を中止し、背水の陣で目標達成に臨んだのだった。

 この野心的な目標を達成する鍵となったのが、まさにシャープと鴻海の「国際垂直分業」だった。

 シャープは製造した液晶テレビを、鴻海の販売網をフル活用し、中国市場での販売台数を約400万台と倍増させ、ついに1000万台を達成したのだった。鴻海系の販社が主体となって安値攻勢で売場を確保し、中国メーカーからシェアを奪っていったのだ。

8Kテレビで挑む新たな市場開拓

 シャープは現在、さらに野心的な成長戦略に挑んでいる。高精細の8Kテレビの市場をシャープ主導で立ち上げようとしているのだ。

 8Kは、現在主流の4Kと比べ4倍の解像度、つまり画素数を持つ。8Kのテレビ放送はまだ始まっていないが、シャープは世界初の8Kテレビを2017年10月に中国に投入、日本では12月に販売を開始している。

 8Kテレビを市販するのは、世界を見渡してもシャープだけ。他社はまだ様子見の段階だ。NHKが、2018年12月1日に4Kおよび8K放送を開始する。これが8K液晶テレビの追い風になるのは間違いない。