導入にあたって、「定着化」という特殊なフェーズを伴うITツールに、いわゆる「SFA(Sales Force Automation)」と言われる営業支援システムがある。主に商談プロセスの管理や、営業組織内の情報共有、顧客データの管理・分析などを行うツールである。

 「これがないと決算できない」「入力しないと業務が止まってしまう」といった性格のものではないため、ユーザーの活用が進まない。「せっかく導入したのに・・・」と嘆く声が、今でも経営の現場からよく聞こえてくる。

 導入の目的や責任者が不明瞭な場合は、当然のことながら定着が進まない。

 加えて、経営陣が「営業プロセス改革」の旗を振って、SFAを鳴り物入りのツールとして導入した場合も、実はあまり定着が進まない。時間と費用をかけて、SFAの活用を全社的なゴールにするようなケースだが、これは強制されているだけで、浸透しているとは言い難い。

 外資系企業において、海外の本社から「このシステムを使え」と強制される場合も、定着が進まない。

 国内の事情はあまり考慮せず、本社の方針で無理やり導入されるケースをよく耳にする。だが、本社の命令であっても、言ってくるのは海の向こうの知らない幹部だし、結局は本社への報告だけが目的となってしまい、日本での業務支援には役立たない。

 SFAには前述のような「なくても仕事は回る」という性格があるため、経営陣やシステム部門が、現場に活用してもらうための働きかけを常にしていなければならない。ちょっと手綱をゆるめると、現場では一気に使われなくなってしまうのである。

まずは「使う」ことを目的としたスタートを

 では、どうすればSFAを自然に定着させ、営業活動の効率化や成果向上に生かすことができるのか。

 一番大切なのは、「現場の営業担当者が必要だと感じるシステムになっているかどうか」である。ここを避けて通ってはいけない。