(文中敬称略)
5月7日にヴラジーミル・プーチンが正式に4期目のロシア大統領に就任した。
番狂わせの途中下車などがなければ、これからさらに彼の6年間の治世をロシアは迎える。それがどのような時代になるのか――。様々な予測がなされてきた。
その大方を集約すれば、「政治・外交で大きな変化は期待できまい、ならばそれがあるとすれば経済・民生分野であろう、そこでどれだけ踏み込んだ政策に向かうのか、すべてはそれ次第」といったところだろうか。
経済となれば基本的に責任を負うのは政府だから、首相や経済関連の諸大臣に誰がなるのか、が注目されてきたわけである。
新味のない閣僚人事
しかし、公表されたロシア政府の新たな陣容は、首相のドミートリー・メドヴェージェフを始めとする重要閣僚の続投が多々で、それまでとあまり変わり映えしないことから、西側では大きなニュースとしては扱われずに終わってしまった。
市場経済派の大御所たる元蔵相のアレクセイ・クドリンも、メドヴェージェフとの昔の確執がまだ尾を引いているのか、体良く会計検査院のトップに祭り上げられて経済政策に直接大鉈を振るう立場には配されなかった。
船出する4期目のメンバーに新味がないなら、ロシア経済の大きな変化への期待はしぼんでしまう。
プーチンの提示した経済政策の指針も、6年前の3期目当選の際に出した(前回の)「5月指令」に比べれば確かに具体性(あるいは熱意)を欠き、今一つ迫力がない。
恐らくプーチンは、今は対外関係が非常時にあると認識して、経済よりも外交・国防政策を政府の優先事項に置いたということなのだろう。
西側との深まる対立で醸成される非常時を切り抜けるべく、まずは再任の重鎮閣僚に最後の御奉公を期待し、その間に自らの後継候補者を選び、その候補者にできるだけ早い時期に大がかりな経済の「構造改革」も任せたい、との意向なのではあるまいか。