戦争の記憶と国威発揚
去る5月9日、ロシアは第2次世界大戦の戦勝記念日を迎えた。ベルリンに突入したソ連軍に対してドイツ第三帝国が降伏文書に調印した日を記念したものであり、今年は戦勝73周年にあたる。
ウラジーミル・プーチン政権は、この戦勝記念日を、国家的一体性を演出する機会として巧みに利用してきた。
戦争参加者を讃えるオレンジと黒の「ゲオルギーのリボン」を街頭で配り、テレビでも連日戦争特集を組むなどして、「ともにナチズムを打倒した」という事実を国民統合のよすがとしているのである。
戦勝記念日の舞台装置として最も壮観なのは、軍事パレードであろう。軍事パレードは首都モスクワをはじめとするロシア全土の主要都市で行われており、今年はモスクワを含めて27都市で実施された。
このほか、北極圏の基地やシリアに展開するロシア軍基地など遠隔地でもパレードが行われている。
このうち最も大規模なのが、首都モスクワの赤の広場で行われるパレードだ。ロシア国防省によれば、今年は人員1万3046人、車両159両、航空機およびヘリコプター75機が動員された。
モスクワでのパレードには、新兵器のお披露目という側面もある。
例えば戦勝70周年の節目であった2015年には、無人砲塔を採用した世界初の実用戦車である「T-14アルマータ」をはじめとして開発中の新型戦闘車両群が登場するなど、過去の戦争を偲ぶばかりではなく、国威発揚にも一役買っている。
もちろん、軍事大国ロシアといえどもそう毎年新兵器が登場するわけではないが、今年のパレードは見所が多かった。以下、その主なものを紹介してみたい。