「欧州最後の独裁国家」
近年、旧ソ連のベラルーシに中国が急接近し始めている。特にこの数年は、経済面だけでなく軍事面でも中国が存在感を発揮し始めたことが大きな特徴である。
本題に入る前に、日本で馴染みの薄いベラルーシという国について簡単に確認しておこう。
旧ソ連の欧州部に位置するベラルーシは、ロシア、ウクライナ、ラトビア、リトアニア、ポーランドと国境を接する内陸国である。国土面積は20万7600平方キロメートルと日本の約半分ほどだが、人口は約950万人にすぎない。
政治的に見ると1994年から現在までアレクサンドル・ルカシェンコ大統領による長期政権が続いており、「欧州最後の独裁国家」として知られる。
対外的にはロシアとの関係が密接で、1999年の連合国家条約によって将来的な国家統合を目指すとしているほか(ただし後述するように、実際には停滞している)、ロシア主導の軍事同盟である集団安全保障条約機構(CSTO)にも加盟している。
中国製兵器を導入
以上からも明らかなように、ベラルーシは現在もロシアの主要同盟国の1つであり、特に安全保障面に関してはほぼ全面的にロシアに依存してきた。
ところが、そのベラルーシが近年、中国製兵器の導入を始めた。その目玉が、ポロネズ多連装ロケット・システムだ。
ポロネズはベラルーシ国産の「MZKT-7930」に中国製の301mmロケット弾「A200」を8発搭載したもので、射程は200キロ以上。INS(慣性航法システム)とGPSの組み合わせによって、命中精度を示すCEP(円形半数必中界。発射されたロケットの半数が必ず落下する範囲)は30~50メートル程度に収まるという。
さらに2017年5月にベラルーシで開催された武器展示会「MILEX-2017」では、このポロネズから様々な種類のロケット弾やミサイルを発射できるGATTS(陸軍汎用戦術攻撃システム)と呼ばれるシステムが展示された。
GATTSから発射できる弾薬の中には中国製の「M20」戦術弾道ミサイル(中国製の「DF-12」の輸出型)も含まれ、射程は280キロとされる。