では、なぜ問題が分かっているのに中国は本格的な改革に着手できないのか。そのことを示しているのが柯隆さんのこの記事「格差固定のコネ社会を待ち受けるもの」である。
日に日に強まるクローニーキャピタリズム
「中国の経済と社会システムは市場メカニズムを取り入れ、平等をモットーとする社会主義の理念はわずか20年で姿を消した。一部の保守的な左派の論者は、現行の社会システムが毛沢東路線から大きく逸脱してしまったとして、猛烈な批判を展開している」
「とはいえ、毛沢東路線への逆戻りは、もはやできない。人々の私利私欲が膨張し、他人よりも豊かになろうとするモチベーションは、予想以上に高まっている」
「そして、あの手この手で一度富を手にした者は、それを保持し続けるために、家族内で継承しようとする。結果的に中国ではクローニーキャピタリズム、すなわち縁故重視型の経済の色彩が日に日に強まっている」
この一度富と既得権益を得た人々が、それを絶対に手放したくない、家族内で継承させたいという強い気持ちが、改革を妨害するのである。
固定資産税やさらに検討されている相続税の導入は、こうした既得権者には徹底的に嫌われる。しかも、政治を司る人たちが、そうした既得権益者なのだ。
政財界の個人資産は1人平均30億円
「中国人民解放軍の元大佐・辛子陵氏によれば、政財界にいる約3000人の太子党は個人資産が平均で2億元(約30億円)に上ると言われている」
こうして中国はバブル経済を膨らまし続けていく。その結果待ち受けるのはバブル崩壊だろうが、それは世界経済にとっても深刻な影響を及ぼすことになる。既に、中国をはじめとした新興国の高成長は資源や食料の高騰となって表れている。
それを示しているのが英エコノミスト誌のこの記事「騰勢強めるコモディティー価格」だ。
「コモディティーが2008年のような盛り上がりを見せている。石油価格は1バレル=100ドルにあと一歩まで迫り、2008年10月以来の高値をつけている」