GEは周知の通り、発明王エジソンが起こした会社である。中興の祖と言える前会長兼CEO(最高経営責任者)であるジャック・ウェルチ氏によって大胆にリストラされ、経営資源を成長分野に徹底的に振り分けた。

中国が喉から手が出るほど欲しい航空電子システム

米GE、公共事業に2億5000万ドルの投資を発表 - インド

バラク・オバマ大統領が信頼するGEのジェフ・イメルト氏〔AFPBB News

 現在の会長兼CEOであるジェフ・イメルト氏は利益率が8%を下回るような事業はGEがやるべきではないとし、ウェルチ氏以上の決断力で事業の再構築に取り組んだ。

 航空機産業やヘルスケア産業、エネルギー産業など最先端で高い成長が見込める事業ばかりを世界中で展開している。米国を代表する企業、というより世界の企業の鏡とも言える会社である。

 バラク・オバマ大統領は、そのGEの技術を胡錦濤国家主席への手土産とした。これは日本や米国のメディアはほとんど指摘しないが、衝撃的な事実ではないかと谷口さんは言う。

 「何と言っても特筆すべきは航空技術分野での提携だろう。GEは今度の合意によって、中国航空工業集団公司(AVIC)と、折半出資のジョイント・ベンチャー(JV)を上海に作ることになった」

 「AVICとはほかでもない、先頃ロバート・ゲイツ米国防長官が訪中のさなか、時期を合わせたかのごとく新鋭戦闘機の試験飛行をやってのけた当の会社である。ステルス性に富む次世代戦闘機、J20とか、殲20と呼ばれる例の機体だ」

供与したハイテク技術は必ず軍事転用される

 「そんな会社にGEは航空電子システムを供与するという。民間機用だから精度は軍用に比し何段階か劣るとして、もしやGEは高を括っているのだとしても、中国はハイテクのかたまりエイビオニクス(航空電子技術)を喉から手が出るほど欲しかったはずだ」

 これらの技術供与によって、中国の航空産業やエネルギー産業は一層成長の速度を上げるに違いない。これは、成長産業で日本にとっても強力なライバルとなる可能性がある。

 例えば、三菱重工業が開発している三菱リージョナルジェット「MRJ」との競合は避けられない。民間の技術競争だけならまだしも、それはほぼ間違いなく軍事転用され、仮想敵国である日本や米国に向けられる。

 今回のオバマ大統領のプレゼントは歴史的な贈り物になるかもしれない。