柳沢氏は筑波大学の近くに住み、ほぼ毎日自転車で通勤している。通勤時間は片道6分。睡眠時間の確保を自ら実践している。

――先生の研究にゴールはあるのでしょうか。

柳沢 先ほど話した2つの大きな問いに答えたいというのがゴールですね。特に、「睡眠の制御」、一言で言えば「眠気の正体」が何なのかを、きちんと現代の神経科学の言葉で言えるようになったらカッコいいですね。

 もちろん、もう1つの「なぜ眠らないといけないのか」という大きな問題もありますけど、その2つが結びついている可能性もあるわけです。もしかしたら「睡眠の機能」と「睡眠の調節」が、実は同じコインの裏表みたいな関係で、どちらかに答えられればもう片方にも答えられるかもしれません。

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 1日の4分の1以上の時間を費やしながら、その正体はいまだつかめていない睡眠。その全容の理解へは、研究者もまだ踏み出したばかりだ。今回の疫学調査が成功すれば、その大きな足がかりになるだろう。

 私たちはなぜ眠るのか――。胸を張って答えられる日が来るのが楽しみでならない。

【参考】人はなぜ眠る? 最適な睡眠とは? 「睡眠の謎」に最新の科学で迫る
https://readyfor.jp/projects/wpi-iiis