柳沢 まず、第1段階は疫学調査として、1000人ほどの被験者を集め、1人当たり1週間、普段の睡眠をきちんと測定していきます。簡易な測定法ですが、加速度計を腰の辺りに付けてもらって、24時間、入浴時以外は付けたままにしてもらって、体が動いているかどうか測定します。それに加えて、睡眠日誌を付けてもらいます。
その2つを比べることで、かなり正確に何時から何時まで眠っていて、寝床にいる時間のうち客観的にどれだけ眠れているかや、中途覚醒や早朝覚醒もあればそれも分かりますし、いろいろなことが分析できます。また、休日と平日とで起床時間が大きく変わるかもしれないので、まずは働いている方々という母集団を対象にデータを集めていきます。
また、睡眠データを取ると同時にアンケートに答えてもらって、自覚的な睡眠の問題がないかどうか、昼間に眠くならないかなど、自覚的な睡眠評価とメンタルヘルスの評価を行っていきます。鬱のような状態にないか、ストレスがないかなど答えてもらって、睡眠状態との相関がないかを調べていきます。
――そのデータを集めた後は、どうするのでしょうか。
柳沢 第2段階は、その中で極端な睡眠態様を示した方を抽出していきたいと考えています。極端な態様とは「ショートスリーパー(Short Sleeper)」や「ロングスリーパー(Long Sleeper)」と呼ばれる、要求睡眠量が体質的に常人とは異なる人たちです。これは全く調査がなされていないので、どのくらいの頻度でいるのか知られていません。我々の今までの感触では、1000人に数人のレベルです。ですので、探すのは大変だと思っています。
目論見としては、そういう人に出会ったら、ご家族に似たような人がいないか聞いて、いるとなればご家族の同意を取って、ご家族も調べさせていただければと思っています。さらに同意が得られれば、DNAもいただいて、次世代シーケンサーによるゲノム解析を用いれば、かなりのことが分かりますので、そこまで持っていきたいです。
特にショートスリーパーの人は「病気」ではなく社会的にも困りませんから医者には行かない。なので、病院など臨床現場での調査ではたぶん見つかりません。本当のショートスリーパーの人は、眠気も訴えませんし、本質的に1日4~5時間の睡眠でも何の支障もない人です。いるとすれば、それは絶対に何かの遺伝子によって、必要睡眠量が規定されているはずなので、その原因遺伝子を見つけたいと思います。
――1000人という調査の規模には、どのような意味があるのでしょうか。