祇園の花見小路通では、けたたましくクラクションを鳴らし、観光客を蹴散らしながら走る車もあった。「観光客に優しくしてよ」と思ったが、地元の住民は多すぎる観光客にイライラしているのかもしれない。
筆者が訪れた3月末は、ちょうど京都府知事選の真っ只中だった。親しくなった飲食店の女将に「そろそろ“地元民の生活を守ろう”なんて公約する候補者が出てくるんじゃないですか?」と軽口をたたくと、「国全体、京都全体が観光に力を入れているから、それはない」という。「観光で儲かっているのはごく一部の人だけ」だというが、それでも“全体の利益”を優先するのは京の人の辛抱強さの表れなのか。
外国人観光客が殺到する“京の台所”
あまりの混雑ぶりにうんざりして「もう二度と京都にはいかない」と思う観光客もいるかもしれない。しかし、筆者は人の多さに辟易しながらも、京都の魅力を再確認することができた。個人的に、京都の底力を強く感じた場所がある。それは、京都市のど真ん中にある商店街「錦市場」(にしきいちば)だ。
錦市場は、野菜や魚、漬物、おばんざいなど食料品を扱う店が数多く並び、“京の台所”として400年も前から地元民に親しまれてきた。道幅はわずか3メートルほど。そこに大量の観光客が殺到するため、今や市内で最も人の密度が高いエリアとなっている。ピークの時間帯は押し合いへし合いで立錐の余地もない。