噂に聞いたとおり、京都の街は観光客でごった返していた。3月末のある日の午前10時、京都駅前の清水寺行のバス停には長蛇の列ができていた。「地元の人がバスに乗れない」と聞いていたが、決して誇張ではなかった。
平日にもかかわらず桜の開花シーズンとあってか、四条大橋はさながら“隅田川の花火”状態だ。夜の先斗町では細い路地に外国からの観光客がどっと繰り出し、前にも後ろにも進めない。見えるのは「人の背中」だけ。これが京都の旅のスタイルなのかと諦めて受け入れるしかない。
風光明媚なはずの嵐山でも、視界に入るのは“人間”ばかりだ。特に目立つのは中国人の団体客である。橋長155メートルの渡月橋(とげつきょう)では、声の大きい中国人観光客の行列ができている。橋のたもとは、観光客、人力車、一般車両が入り混じって、大混乱の状態だ。観光客は写真を撮るのに夢中で、背後の車に気づかない。赤信号もおかまいなし、シャッターチャンスとあらば車道に飛び出していく。