「枠の限定」は文化の発展を妨げる

 日式拉麺が中国全土に普及していることからも、上記の反応は私の知人に限らず中国人全体の意見と捉えてよさそうです。

 そもそも中華料理自体、漢族だけではなく蒙古族、回族、満州族など、多種多様な民族の料理を鷹揚に取り込み続けてバラエティ豊かに発展してきた歴史があります。寛容性という点では、間違いなく世界屈指の料理文化だと言えるでしょう。

 一方、筆者がこうした「料理の寛容性」の点で少し気がかりなのは、ほかならぬ我らが日本の「和食」です。

 最近、農林水産省が和食調理技能の認定制度を始めたり、海外における間違った和食を正すといったテレビ番組も放送されたりしています。しかし、知人の中国人が証言した通り、現地に合わせた料理のローカライズは海外での普及にとって必要不可欠です。和食の枠を限定するかのような姿勢は、かえって料理文化の発展、拡大を阻害してしまうのではないでしょうか。

「オリジナル」以外の和食は和食じゃないという声も聞かれますが、そもそも本当にオリジナルの和食というものがあるのか分かりません。海外で生まれた和食でも、日本人もおいしいと感じるものは逆輸入して和食として取り込んでしまうくらいの寛容さが、食文化の発展には必要なのではないでしょうか。